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ANS-9010 や SSD と HighPoint RocketRAID 3520 を用いた RAID実験  



2008年9月頃初めてオンボードRAID(ICH10R)をi-RAMで使ってみてその速さに驚いた。その後、オンボRAIDには転送速度に500〜600MB/s程度の上限があることがわかり、2008年10月15日の記事で、秋葉原の店頭でAdaptec RAID 5805を用いて910MB/sの高速ベンチを出しているのを見てすごいパソコンがあるのだなあと思っていた。2008年10月31日に突然秋葉原のドスバラでANS-9010が発売になり、当日完売しその後入荷もなかなかなかったが、12月になって入荷も増えはじめ価格も2割ほど下がってきたので、ANS-9010Adaptec RAID 5805を使ってどれくらいの転送速度が出るのか知りたくなり、購入してテストしてみたところ最大転送速度が1.258GB/sに達することがわかったが、キャッシュの影響が大きいことがわかってきた。

Core 2 Extreme と C2DやP4ではfrequencyだけでなくて L2 cacheサイズも高速化に重要と説明されていたり、高価なグラフィック・カードほど大きなキャッシュが搭載されていたりすることから、RAIDコントローラー・カードでもやはりキャッシュの働きが重要と考え、DDR2DRAMを差し替えることによってRAIDコントローラー・カードのキャッシュサイズを変えることのできるArecaARC-1231MLでキャッシュサイズを変えて速度を測ってみて、さらに高速になることがわかってきた。

Adaptec RAID 5805は512MBのキャッシュを搭載しているので512MB〜700MB(CD程度)のデータの転送作業で最も体感速度が速く有用と考えられる。
Areca ARC-1231MLでは2GBまでキャッシュを搭載できるので、2GB〜4.36GB(DVD程度)のデータの転送作業で最も体感速度が速く有用と考えられる。

Blu-rayでは22GB〜40GB程度のデータを取り扱うので、このサイズのデータを高速ドライブ間で転送する場合には、やはりキャッシュに頼らずに最も高速なカードが大切な気がする。

これはやはり2chの先人達の知恵でHighPoint RocketRAID 3520が最も高速と定評があり、これを用いてキャッシュをオンにしたときとオフにしたときの変化とキャッシュオフでの最高転送速度を知りたかったので、最後になったがHighPoint RocketRAID 3520を2009年1月に買ってテストしてみた。テストではANS-9010をストライピングしてテスト@を行ったが、別の実験としてAでSSDの追加実験も行いたいことがあったので、このサイトの後半にその結果を記載します。

今まで、RAID実験を行った順番は以下の通りで、下記のCrystalDiskMarkの結果の解釈についてわかりにくければ、こちらをこの順に見て参考にしてください。
 @ 初めてのRAID
 A i-RAM 3・4台
 B i-RAM 5・6台
 C ANS-9010の基礎的実験
 D ANS-9010とICH10R
 E Adaptec
 F Areca
 G Adaptec -続編付随実験-
 H HighPoint


まず最初に、ACARD製のANS-9010 4台(8ポート使用) と HighPoint RocketRAID 3520 を用いて、ベンチマーク測定テストを行ってみた。
HighPoint RocketRAID 3520 には RAIDコントローラー・カードのキャッシュの設定は、
a) cache: Write back (キャッシュした後で接続ドライブに書き込みを行う設定)
b) cache: Write through (キャッシュと接続ドライブへの書き込みを同時に行う設定)
c) cache: None (キャッシュ機能なしの設定)
の3種類がある。
Sector size は 512 bytes で、下記の実験用パソコンの条件では不可変であった。

使用した実験用パソコンのスペックは次の通りです。
 CPU: Core 2 Duo E8600 3.33GHz, 1333MHz FSB, 6MB L2 cache
 RAM: Samsung M378T5663RZ3-CF7 DDR2 PC6400 2GB × 2枚
 Northbridge: Intel P45
 Southbridge: Intel ICH10R
 Motherboard: GIGABYTE EP45-DS3R
 Boot HDD: HDS721616PLAT80 (Hitachi 7200rpm 160GB UltraATA133)
 GFX: GIGABYTE GeForce 7300GS (nVIDIA 7300GS)
 Powered by: GOURIKI-P-550A


@HighPoint RocketRAID 3520 のデフォルトの表示が cache: write back となっているので、デフォルト表示のままその設定を行い、ANS-9010 4台(8ポート)を用いて CrystalDiskMark の計測サイズを@a 50MB・@b 100MB・@c 1000MBと変えてベンチマーク測定を行ってみた。
@a 50MB @b 100MB @c 1000MB

@ HighPoint RocketRAID 3520 の搭載キャッシュが256MBあり CrystalDiskMark のベンチマーク計測サイズの50MB・100MBを上回っているため@aと@bでキャッシュの影響が強く、@cでキャッシュの影響が弱くなっていると考えられる。@aと@bではRandomの512KBと4KBでほぼ同じ数値になっていることから、これが Intel P45 から PCIe x16 スロットを通過してRAIDコントローラー・キャッシュ内へのデータを転送する速度と考えられる。これに対して、Sequential Read や Sequential Write のデータは3つともあまり変わりはないので、HighPoint RocketRAID 3520 は Sequential Read や Sequential Write では、キャッシュ機能をあまり利用していないか有効に活用されていないように思われる。

@CrystalDiskMark のベンチマーク計測サイズの1000MBにしたまま、ANS-9010 4台(8ポート)を用いて、HighPoint RocketRAID 3520 のキャッシュを @d cache: write through および @e cache: none に変えてみた場合のベンチマークテストも行い、@c cache: write back・@d cache: write through・@e cache: none の順に結果を並べてみた。

@c write back @d write through @e none

キャッシュは一般的には本来転送速度を上げて最大throughput値を向上させる目的で搭載されているが、CrystalDiskMarkの1000MBテストでキャッシュより大きな書き込みを行ってテストしてみると、キャッシュ機能をオンにした@c cache: write back の場合よりも、キャッシュ機能をオフにした@e cache: none の場合に書込転送速度が最も速いという結果については、HighPoint RocketRAID 3520 が他のカードと全く違う異色のカードなので、この点については少し意外であった。

この特異な性質のため、HighPoint RocketRAID 3520 はキャッシュをオフにして、大サイズファイルを転送すると最も高速であると考えられる。
(このサイトをuploadした2008年1月25日の時点で HighPoint RocketRAID の中で概ね最速でしたが、三日天下でした。Intel IOP348 I/O processor (1.2GHz) を搭載したHighPoint RocketRAID 4320は CrystalDiskMark の1000MBテストで転送速度が遅いとの書き込みがどこかの掲示板にあったので、Intel IOP341 I/O processor(800 MHz) を搭載した RR3520 を購入して実験してみましたが、2008年1月28日の2chで、RR4320の新ファームで Sequential Read : 845.626 MB/s、Sequential Write : 923.449 MB/s となっているので、最新ファームでは、HighPoint RocketRAID 4320 がHighPoint RocketRAID の中で最速のRAIDコントローラー・カードです。Processor名はtypo? cached text)

HighPoint RocketRAID 3520は、よく言えばキャッシュなしでも速い、悪くいえばキャッシュをうまく利用できていないと言える。私の使ってみた範囲では、キャッシュの利用が最も上手なRAIDコントローラー・カードとしてAreca ARC-1231MLがある。キャッシュを換装できる上に、CrystalDiskMark の1000MBテストの4KBのRandomで 55〜163MB/sも出るが、同じ会社の同一型番HDDでも認識しなかったり、ANS-9010で使えなかったりと、相性問題で使いたくても使えないことがある点が若き女性のごとく美しく繊細である。RAIDマニアの羨望のカードである。この点、HighPoint RocketRAID 3520 は、キャッシュをしばしばスルーすると言えども、HDDはもちろん i-RAM・ANS-9010・SSD とほとんど相性問題がない点は立派に作られていると思う。RAIDカードの相性問題で困ったときには、よい意味で野武士のごとく強力な救世主である。RAIDマニアの腹心のカードと言える。

結論的に、HighPoint RocketRAID 3520は Blu-rayディスクなどの10GB〜40GB程度の大きなデータを転送したい場合に、HighPoint RocketRAID 4320 についで高速なRAIDコントローラー・カードであると考えられる。


Aここから下は上記@の ANS-9010 4台を用いた実験とは別の趣旨で、SSD6個(6ポート)を用いた別の実験です。

NTFS vs. FAT32のページで、OCZ OCZSSD2-2C30G と Silicon Power SP032GBSSD650S25 は、単体使用時にNTFSでフォーマットするかFAT32でフォーマットするかによって転送速度に差があることがわかった。今回、HighPoint RocketRAID 3520を購入したので、このRAIDカードを用いてこれらのSSD6枚でストライピングを行った場合、それでもまだ転送速度に差があるかどうか知りたかったので、SP032GBSSD650S25 4個とOCZSSD2-2C30G 2個を用いて RAID 0 での CrystalDiskMark 100MBと1000MBのベンチマークテストを行ってみた。
OCZSSD2-2C30GSP032GBSSD650S25は同一のSSDとして取り扱って良いことは、OCZ と Silicon Power を組み合わせた SSD RAID実験のページで確認してある。)

A最初に、HighPoint RocketRAID 3520 をデフォルトの表示の cache: write back に設定し、SP032GBSSD650S25 4個と OCZSSD2-2C30G 2個の同一性能SSD6個(6ポート)を用いて CrystalDiskMark の計測サイズを100MBとして、フォーマットするファイルシステムを Aa NTFS・Ab FAT32と変えてベンチマーク測定を行ってみた。
Aa 100MB NTFS Ab 100MB FAT32

CrystalDiskMark の 100MBでの計測時、FAT32 ではSequential Read が508MB/sで、NTFS ではSequential Read が469MB/sだったので、FAT32 の転送速度の方が8.36%高速であった。

次に、HighPoint RocketRAID 3520 を同様にデフォルト表示の cache: write back に設定し、SP032GBSSD650S25 4個と OCZSSD2-2C30G 2個の同一性能SSD6個を用いて CrystalDiskMark の計測サイズを1000MBとして、フォーマットするファイルシステムを Ac NTFS・Ad FAT32と変えてベンチマーク測定を行ってみた。
Ac 1000MB NTFS Ad 1000MB FAT32

CrystalDiskMark の 1000MBでの計測時、FAT32 で482MB/sで、NTFS ではSequential Read が437MB/sだったので、FAT32 の転送速度の方が10.32%高速であった。

SP032GBSSD650S25OCZSSD2-2C30GNTFS vs. FAT32 のページに記載したように、単体で benchmark を測定すると、FAT32の場合に Sequential read で13.4%〜19.1%高速であった。転送速度は理由もなく増加することはあり得ないので、NTFSで format した場合に何らかの理由があって転送が遅延したと考えるのが適切であろう。このJMF602チップ搭載のSSDを6個集めてにRAIDした場合にその差がどうなるか調べてみた結果、6個のRAIDでもFAT32で format した場合の方が高速であったが、その増加速度は8.36%〜10.32%程度となり、単体の場合にNTFSで何らかの理由でFAT32の場合よりも転送遅延があったものが、6個のSSDをRAIDにすることによってその転送遅延が半分程度は改善されたものと解釈すべきと考えられる。