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微細加工プロセス SSD 初期の Raw Bit Error Rate (RBER) 



2010年11月28日に微細加工プロセスSSD初期のRaw Bit Error Rate (RBER)を調べてみた。S.M.A.R.T.の仕様がTranscendから公開されているIndilinx controllerのSSDのうち、Toshiba 43nm process NAND flash使用のSuperTalent FTM64G225Hと、IMFT 34nm process NAND flash使用のOCZ OCZSSD2-1ONYX32Gを用いた。

Toshiba IMFT


この2つのSSDは、Lansen氏が新たにデータ保持エラーの大きさの検証を含めた新しいSSD耐久テストに用いているSSDで、自分のシステムでどうなるのか知りたかったので、この2つのSSDの初期の性能を再検証してみた。

最初に使用した実験用パソコンのスペックは次の通りです。
 CPU: Core 2 Duo E8600 3.33GHz, 1333MHz FSB, 6MB L2 cache
 RAM: Samsung M378T5663RZ3-CF7 DDR2 PC6400 2GB × 4枚
 Northbridge: Intel P45
 Southbridge: Intel ICH10R
 Motherboard: GIGABYTE EP45-DS3R
 Boot SSD: CSSD-PM32NL IDE接続
 GFX: GIGABYTE GeForce 7300GS (nVIDIA 7300GS)
 Powered by: GOURIKI-P-550A
 OS: WinXP SP1

4,194,304KB の圧縮されたOSのバックアップファイルを7回、テスト用のSSDに書込みコピーして、SSDの内部の状態は次のようになった。

Toshiba IMFT

このSSDからSeagate 1TBのHDDに 30,064,787,456バイト(28.0GB)のデータを、4回で合計112GB読出し、28GB読出すごとに毎回RBER計算してみた。実験前にベンチを測定した関係上、SSDの当初の状態は若干異なっている。


@1回目の28GB読出し後の状態

@a Toshiba @b IMFT

@Toshiba NANDSuperTalent FTM64G225HでRBERは4,508/(58,840,774*4096)=1.87E-8で、IMFT NAND使用のOCZ OCZSSD2-1ONYX32GRBERは171,937/(66,904,795*4096)=6.27E-7であった。


A2回目の56GB読出し後の状態

Aa Toshiba Ab IMFT

AToshiba NANDのSuperTalent FTM64G225HでRBERは8,929/(117,561,671*4096)=1.85E-8で、IMFT NAND使用のOCZ OCZSSD2-1ONYX32GでRBERは335,037/(125,626,716*4096)=6.51E-7であった。


B3回目の84GB読出し後の状態

Ba Toshiba Bb IMFT

BToshiba NANDのSuperTalent FTM64G225HでRBERは13,320/(176,324,533*4096)=1.84E-8で、IMFT NAND使用のOCZ OCZSSD2-1ONYX32GでRBERは495,977/(184,348,125*4096)=6.57E-7であった。


C4回目の112GB読出し後の状態

Ca Toshiba Cb IMFT

CToshiba NANDのSuperTalent FTM64G225HでRBERは17,704/(235,045,302*4096)=1.83E-8で、IMFT NAND使用のOCZ OCZSSD2-1ONYX32GでRBERは656,167/(243,070,046*4096)=6.59E-7であった。


D私のSuperTalent FTM64G225Hの初期のRBERは1.83E-8で、Lansen氏のデータ 1.81E-8とほぼ一致した。しかし、 私のOCZ OCZSSD2-1ONYX32Gの場合の初期RBERは6.59E-7で、Lansen氏のデータでは1.83E-7で3.6倍の開きがあった。システムの違いかもしれないし、SSDの個体差かもしれないと思ったので、別のOCZ OCZSSD2-1ONYX32Gを用いて同じ実験を行ってみたが、今回は書込みドライブはSeagateのHDDの代わりにANS-9010を用いてみた。

DIMFT

DOCZ OCZSSD2-1ONYX32Gの2個目の個体の測定結果は、443,069/(243,675,221*4096)=4.47E-7であった。今回はLansen氏のデータの2.4倍どまりだったので、SSDの個体差なのかもしれないと思った。Silicon waferの中心と外周では出来上がったNAND chipに個体差があるのかもしれない。 All NAND flash devices are NOT created eqaul even though all men are created equal. Reason.)


EIMFT NAND使用のOCZ OCZSSD2-1ONYX32Gで個体差があるので、Toshiba NANDのSuperTalent FTM64G225Hでどのぐらい個体差があるのか気になってきた。ベンチ測定用に購入したもう1つのSuperTalent FTM64G225Hでは、Lansen氏と同様にベンチ測定時のRBERがEaのように 12,809/(34,490,665*4096)=9.07E-8 と高かった。このSSDで既にベンチ測定してしまっていたので、2個目のSuperTalent FTM64G225Hに同様の追加書込みした分についてRBERがどうなるかを調べてみた。下のscreen shotsの左Eaがベンチ計測のみ行った直後のデータで、右Ebが1個目のSSDと同様の方法で読出しテストを追加測定したあとのデータである。

Ea Bench後 Eb 読出後

E両者の差分が、2個目のSSDの読出しテストのRBERの測定結果となるので、差分で計算すると、(28,711-12,809)/{(277,408,506-34,490,665)*4096}=1.60E-8 となった。結果を下表にまとめた。

………………… R B E R の 比 較 結 果 …………………
Toshiba NAND IMFT NAND
SSD個体No.1 1.83E-8 6.59E-7
SSD個体No.2 1.60E-8 4.47E-7
Lansen氏のSSD 1.81E-8 1.83E-7
平 均 1.75E-8 4.30E-7


本来はJEDECの耐久性評価基準のように31台以上のSSDで統計処理をして判断すべきですが、データは3つしかないので、それから伺える傾向としては下記の結論に至った。

結論: 34nm IMFT NAND flashでは43nm Toshiba NAND flashに比べて平均で約25倍RBER(=ECC補正前のビットエラーの発生率)が高く、製品間のばらつきも多かった。


F過去に発売された推定50nm世代のMLC(s592)とSLC(K5-64)の現時点の私のSSDの状態です。

Fa s592

s592でRBERは2,200/(112,521,477*4096)=4.77E-9で、43nm Toshiba NANDのRBER 1.75E-8 と比べて3.66倍の差で、この両者の間ではプロセス世代間の差はわずかであった。

Fb K5-64

K5-64でRBERは1,321/(1,036,534,248*4096)=3.11E-10であった。


製造プロセス

製造過程の微細化プロセスはMoore's Lawに従って着実に躍進してきた。


 R B E R 

これと同時にRBERも逆説的にMoore's Lawに従って上昇してきている。(∵Floating gate内のelectron数が減少するから)
(ただし、s592については、当初よりバラツキがあって43nm NANDよりもRBERが大きいものも多かった。)


最近のSSDの選択時の評価項目としては、速度がすべての様相を呈してきていて、車で言えばみんながPorcheを選択している状態である。微細プロセスのSSDでRBERが指数関数的に増大している事が分かると、データの安全性を重視したい人たちの中には車で言えばMercedesを選択する人も増えてくるかもしれない。

私は、昔のSSDに比べて 1,000倍以上もエラーが発生する最速のSSDよりも、データがより安全なSSDの方が個人的には好きである。SSDのベンチの差は体感しにくいけど、system failureはPCが不調になるのですぐに体感できるからである。
旧ファーム新ファームで、Erase/Program failureなどの車で言えば安全基準に該当する情報をfirmware updateによって非公開にする会社も出てきたのでご注意を。)


34nm IMFT NAND flashではRBERは 4.30E-7であるので、最新プロセスルールのNAND flashは昔のSLC NANDの3.11E-10に比べて1,382倍もRBERが高く、データの安全性が充分とは言えないかもしれない気もするので、重要なデータはやはり2007年当時のSSDと同等レベルのUncorrectable Read Error Rateが1E-15程度のHDDにバックアップをすることが大切だと思った。