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JMF612 + Toshiba 43nm NAND flash  
( CSSD-SM64NJ2 と CSSD-SM64WJ2 の比較 ) 



2009年10月10日に、ドスパラ通販でCFDCSSD-SM64NJ2CSSD-SM128NJ2が発売になった。限定販売数が少なく買えなかったが、その夜PC DEPOT Webshopでも在庫有りとなったので、「ARM 9 processor採用のJMF612 controller chip+Toshibaの最新NAND型flash memory+Elpida64MB書込みcache搭載」のSSDを購入することができた。

CSSD-SM64NJ2(64GB)は、Samsungのflash memoryを搭載したPhotoFastのJMF612チップ採用の G-Monster V5J(128GB)の当初価格6万円の約1/4の価格設定で、適正サイズの起動ドライブ用SSDとして使える良心的価格設定である。
2009年10月13日にベンチマークテストと簡単な実用テストを行ってみました。

使用した実験用パソコンのスペックは次の通りです。
 CPU: Core 2 Duo E8600 3.33GHz, 1333MHz FSB, 6MB L2 cache
 RAM: Samsung M378T5663RZ3-CF7 DDR2 PC6400 2GB × 4枚
 Northbridge: Intel P45
 Southbridge: Intel ICH10R
 Motherboard: GIGABYTE EP45-DS3R
 Boot HDD: HDS721616PLAT80 (Hitachi 7200rpm 160GB UltraATA133)
 GFX: GIGABYTE GeForce 7300GS (nVIDIA 7300GS)
 Powered by: GOURIKI-P-550A
 OS: WinXP SP2


§1. ベンチマークテスト (Benchmarks)

@最初に、CrystalDiskMark の計測サイズを100MBとして、フォーマットするファイルシステムを @a FAT32・@b NTFS と変えてベンチマーク測定を行ってみました。

(このセクション(§1)と次のセクション(§2)は、すべて「CSSD-SM64NJ2」のテスト結果です。「CSSD-SM64WJ2」の結果はこちらです。)


@a 100MB FAT32 @b 100MB NTFS

@CrystalDiskMarkの 100MBでの計測結果は、FAT32の Sequential Read が 255.4MB/s で Sequential Write が 125.1MB/s で、NTFSの Sequential Read が 258.4MB/s で Sequential Write が 130.0MB/s でした。

A次に、CrystalDiskMark の計測サイズを1000MBとして、フォーマットするファイルシステムを Aa FAT32・Ab NTFS と変えてベンチマーク測定を行ってみました。

Aa 1000MB FAT32 Ab 1000MB NTFS

ACrystalDiskMarkの 1000MBでの計測結果は、FAT32の Sequential Read が 257.4MB/s で Sequential Write が 183.0MB/s で、NTFSの Sequential Read が 259.3MB/s で Sequential Write が 176.4MB/s でした。


CrystalDiskMarkの 1000MBでの Sequential Read の最速値は 259.3MB/s で Intel X25-M とほぼ同等であった。Sequential Write については Intel X25-M や OCZ Vertex の2倍以上あって、十分高速であった。

最近のSSDは Random Read 4KB の値が17〜24MB/sの製品が多いが、CSSD-SM64NJ2 は Random Read 4KB の値が13MB/s程度なので、この点が他のSSDと比べた唯一の弱点であるが、HDDの Random Read 4KB の測定値が0.681MB/sだったことを考えると、この私の常用HDDの約20倍高速なのでOSの起動やapplication softwaresの軌道速度は体感的には全く問題なく高速であると考えられる。


B SSDの転送速度はcontroller chipとNAND型flash memoryの両者の性能によって決まり、そのどちらかに律速段階(bottleneck)があれば、そこで性能が限定される。

右はCSSD-SM64NJ2の内部基板の写真で、このNAND flashには「TH58NVG5D2ETA20」と印刷され、4GBのNANDチップが16枚入っていた。
(ちなみにCSSD-SM128NJ2の中には「TH58NVG6D2ETA20」と印刷された8GBのNANDチップが16枚入っていて、NANDチップが両面実装された基板の外観は裏表共、右のCSSD-SM64NJ2と同じであった。)

THNS128GG4BBAAのNAND flashの製品番号はとても不明瞭で判読困難であったが、「TH58NVG7D7EBAKO」と書いてあるように見え、全文字が完全に読めたわけではないが、ほぼ同様の性能の43nm NAND flashシリーズと推定できる。
「TH58NVG」のあとの数字「5」が4GBのNANDチップを表し、「6」が8GBのNANDチップを表し、「7」が16GBのNANDチップを表すのかもしれない。

CSSD-SM64NJ2はARM9を搭載したJMF612 controller chipとELPIDAの64MBのDRAM cacheを採用してSSDの本体価格がJMF602採用のSSDの再安期と同じレベルであるので、未公表ではあるがメーカーの採算のことを考えるとCSSD-SM64NJ2に採用したNAND flashは東芝の43nm製造プロセスの最新NANDと考えるのが順当であろう。

また、東芝の最新のSSDサイトの説明でも、「書き込み速度:最大180MB/秒、読み出し速度:最大230MB/秒 、※43nmプロセス多値NAND採用SSDの場合」と説明されているので、CSSD-SM64NJ2のベンチ結果から見てもCSSD-SM64NJ2に搭載されたNAND flashは東芝の最新型43nmテクノロジーSSDであることは疑いない。

次のセクションの実用テストDのところで書いたようにCSSD-SM64NJ2THNS128GG4BBAAは、SSDのcontroller chipは違うがNAND型flash memoryは同じ東芝の最新型 43nm NAND flashである。

この両者のcontroller chipが最新の性能で、NAND型flash memoryの性能はほぼ同一であったため、同じようなベンチマークテスト結果と実用テスト結果が出たと考えられる。

それでは、controller chipが同じJMF612の場合で、NAND型flash memoryが違う場合はどうだろうか。
最新のToshiba 43nm NAND型flash memoryを搭載したCSSD-SM64NJ2の私の計測したデータと、Samsung「K9HCG08U1D」NAND型flash memoryを搭載したG-Monster V5J GM-25M128GSSDV5JのWebで公表されているデータで比較してみる。
K9HCG08U1Dの製造プロセスはメーカーは公表しておらず2chに「K9HCG08U1Dってことは42nmか」と記載されている程度である。)

@b 100MB Toshiba Ba 100MB Samsung

Ab 1000MB Toshiba Bb 1000MB Samsung


Toshiba flash memory採用のSSDとSamsung flash memory採用のSSDのベンチマーク結果を比較すると、Randomの速度はあまり変わりはないが、Sequentialの転送速度はToshibaのflash memory採用のSSDの方がSamsungのflash memory採用のSSDより15〜25%高速である。
Samsungの 5th generation のNAND素子の読書速度が律速段階(bottleneck)となってToshibaのSSDより転送速度が遅いと推測される。

自分のパソコンでもSamsung flash memory採用のSSD(G-Monster V5J GM-25M128GSSDV5J)の転送速度を再確認してみた。

Ba' 100MB V5J Bb' 1000MB V5J

Ba'≒Ba∧Bb'≒Bbとなり、NAND flashが低速な場合はSequential Writeが低速になることが確認された。

同様の現象はSSDのcontroller chipが同じIntelX25-EX25-Mの間でも見られ、読書速度が速いSLC flash memory採用のX25-Eの方が、読書速度が遅いMLC flash memory採用のX25-Mより、Sequentialの転送速度のベンチマークテスト結果が優れている。
VertexAgilityも同様である。

Intel の「天野神様」はX25-Mの連続書込速度が遅い点を「ランダムアクセス向けに設計したから」と説明しているが、一般人間の私は搭載しているIntel/MicronIMFT; Intel-Micron Flash Technologies) のMLC NAND flashの書込速度が遅いことが原因の可能性の1つであると推測している。
( ∵ NAND素子の最大書込速度×チャンネル数=SSDの最大連続書込速度 )

この推論は内部転送チャンネル数を半減したX25-Vで、連続読出速度が半減しないにもかかわらず、連続書込速度が「35MB/s write」と半減することからも裏付けられるし、RAID 0でベンチ測定実験をしてもストライピングする単体のドライブの性能が悪いとSequential Writeは向上しないことからも容易に推定できる。
(2010年3月27日頃発売CSSD-SM64WJ3は、従来43nm東芝NANDを使用していたCSSD-SM64WJ2のNAND flashのみIntel 34nm製品に変更したものであるが、CSSD-SM64WJ3の連続書込速度CSSD-SM64WJ2の連続書込速度に比して明らかに遅いことが判明した。)

結論的には、Toshiba 43nm NAND型flash memoryを採用したSSDが、2009年10月10日の時点で連続読書速度が最速のSSDとなりうると言える。
また、他社の34nm NAND flash採用のSSDよりもセルの寿命や荷電保持期間は理論的に長く、長期間データが安定していると予測される。

補足: 50nm製造プロセスのNAND flashはセルの書込回数の寿命は一般的に10,000回とされている。
34nm製造プロセスのNAND flashは、電子の通過する酸化絶縁膜の面積からの単純計算で 10,000x(34x34)/(50x50)=4,624回 と推測していたが、TechConnectの新製品紹介記事で "The 32Gb MLC NAND achieves 30,000 write cycles, some six times more than standard chips" と書いてあるので "standard chips"の書込回数の寿命は 30,000/6=5,000回 とメーカーが認めていることになる。
同様に、43nm製造プロセスのNAND flashは単純計算で 10,000x(43x43)/(50x50)=7,396回 と推測できる。
すなわち、単純計算で、Toshibaの43nm製造プロセスのNAND flashセルの書込回数の寿命は、他社の34nm製造プロセスのNAND flashセルの書込回数の寿命に比して 7,396/4,624=1.599≒1.6倍 長寿命であると推測できる。
長寿命で高速なSLCがMLCより高価なのが当然とすれば、長寿命で高速なToshibaとそうでない他社のSSDの価格がほぼ同じならば、ToshibaのSSDは他社のSSDに比べて 1/1.6=62.5% の価格設定でしかなく、お買い得と言える。





§2. 実用テスト

C最後に実用試験として、「読書交錯遅延倍率(DelayRatio)」(仮称) の測定を行ってみました。
実験方法の詳細についてはリンク先をご覧下さい。

C CFD CSSD-SM64NJ2 MLC 64GB 1個単体の結果:
「コピー&ペースト(C&P)」2回の用手計測データ: 67.67s 66.71,「Write(W)」23.84s 24.30s,「Read(R)」22.16s 20.74s
「コピー&ペースト(C&P)」平均値: 67.19s,「Write(W)」24.07s,「Read(R)」21.45s
RAM disk の読み書き分を引いて 「コピー&ペースト(C&P)」67.19s,「Write(Wnet)」23.25s,「Read(Rnet)」20.09s
「読書交錯遅延倍率(DelayRatio)」: 「読書交錯遅延倍率(DelayRatio)」=(C&P)/{(Wnet)+(Rnet)}=(C&P)/{(W-0.82)+(R-1.36)}=1.55

同じNAND型flash memoryを搭載した最新のToshiba SSDでは下記のDの様であった。

D Toshiba SSD (THNS128GG4BBAA) MLC 128GB 1個単体の結果:
「コピー&ペースト(C&P)」2回の用手計測データ: 68.37s 66.47,「Write(W)」23.83s 23.06s,「Read(R)」26.87s 25.96s
「コピー&ペースト(C&P)」平均値: 67.42s,「Write(W)」23.45s,「Read(R)」26.42s
RAM disk の読み書き分を引いて 「コピー&ペースト(C&P)」67.42s,「Write(Wnet)」22.63s,「Read(Rnet)」25.06s
「読書交錯遅延倍率(DelayRatio)」: 「読書交錯遅延倍率(DelayRatio)」=(C&P)/{(Wnet)+(Rnet)}=(C&P)/{(W-0.82)+(R-1.36)}=1.41

実用テスト上は、CSSD-SM64NJ2THNS128GG4BBAA はとてもよく似た高性能SSDで、Toshibaの最新型 43nm flash memoryの性能を十分に引き出したSSDと言える。

この点は同じSamsungのflash memoryを搭載していても、JMF602チップとIndilinxチップを搭載したSSDではcacheの有無の違いもあるが、プチフリの有無やベンチ結果・実用テスト結果など異なった性格を有していたのと比べ、今回の新発売の2つのSSDはflash memoryと書込みcacheが同じでcontroller chipが違うにもかかわらず実用テスト上ほぼ同性能であったことはとても興味深いと思われた。SSDのcontrollerの技術が確立されてきたような印象を受ける。




CSSD-SM64NJ2とCSSD-SM64WJ2の比較追加実験: は2010年1月5日にCSSD-SM64NJ2を改良したCSSD-SM64WJ2が発売された。
新製品のCSSD-SM64WJ2は、ARM 9 processor採用のJMF612 controller chip+Toshibaの最新NAND型flash memory である点はCSSD-SM64NJ2と同じであるが、書込みcacheはSamsung製128MBとなり、下のCrystalDiskInfoで示されるようにTRIM対応となった。

NJ2 WJ2

温度表示は常にCSSD-SM64NJ2は48℃、CSSD-SM64WJ2は40℃と表示され、CrystalDiskInfoで表示されている温度は実際のSSDの温度ではないようである。

ECSSD-SM64WJ2 をNTFSでフォーマットし、100MBと1000MBでベンチ測定を行った。

Ca 100MB NTFS Cb 1000MB NTFS

C CSSD-SM64WJ2はCSSD-SM64NJ2に比較すると、512KBの書込速度が同じNAND flashを採用しているToshiba SSD HG2 Series 並に速くなった。
A-DATA AS596B-64GM-C はJMF612+Intel NANDの組み合わせとされ、公称Sequential Writeは100〜110MB/sである。私のシステムでのCSSD-SM64WJ2の書込速度計測結果は194.9MB/sあったので、同じJMF612のcontrollerを使っていてもToshiba NANDを搭載した製品ではIntel NANDを使った製品より連続書込が約2倍速いことがわかった。

最新型Toshiba 43nm NAND flash memoryを採用したCSSD-SM64WJ2 は Intel X25-M や OCZ Vertex のような連続書込速度の実測値が低いという弱点もなく、搭載されているJMF612 controllerはJMF602での高性能のwear levelling技術を踏襲していると推測されるので、 Toshiba SSD と共に今後の Mainstream になると思われたが、CSSD-SM64WJ2は「ディスコン」になり速度の遅いCSSD-SM64WJ3が後継機種となったので、品質のよいToshiba 43nm NAND flashを採用したSSDとしては、2010年 4月15日から価格の下がってきた I-O DATAのSSDN-ST64Bを購入すればよいであろう。