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辻整形外科クリニック   PAINFUL LESION

TSUJI ORTHOPAEDIC INSTITUTE


MIS人工膝関節手術 MITKA

この写真は変形性膝関節症の患者さんに対して、人工膝関節手術(人工膝関節形成術(TKA)・人工膝関節置換術(TKR))を行った後の術後X線写真です。 (MIS人工股関節で検索された方はこちらへどうぞ)

人工膝関節手術では、大腿骨の遠位部には強度が高く摩耗に強いコバルト・クロム合金でできたフェモラル・コンポーネントという部品を設置してあります。脛骨の近位部には骨親和性に優れ形成加工しやすいチタン合金でできたティビアル・コンポーネントという部品を設置してあります。大腿骨と脛骨の間には、ティビアル・コンポーネント上に、耐摩耗性が高く長寿命が期待されるクロスリンクの超高分子ポリエチレンでできたディビアル・インサートという部品が設置され、人の軟骨の代わりをしています。また、膝蓋骨(膝の皿)の裏にも超高分子ポリエチレンのパテラ・コンポーネントという部品も設置し、立ったり座ったりするときの膝の皿の裏の軽度の疼痛や不快感を取り除くようにしてあります。

人工膝関節手術の適応疾患として最も多いものは変形性膝関節症ですが、ほかに関節リウマチや大腿骨遠位部の特発性骨壊死などがあります。



<最新のMIS最小侵襲手術による人工膝関節手術(人工膝関節形成術 TKA)について>


上の2枚の写真は、当院で約10年前に手術した人工膝関節形成術々後の手術創の写真です。約15年前より、人工膝関節手術の工具を改良し、小さな手術創での人工膝関節手術に努めており、今までは、約11cm〜13cmの傷で手術を行っておりました。一般的には20cm〜25cm切開する施設が多かったので、約60%の手術創の長さでの手術に取り組んでいました。しかし、股関節の手術症例で、当院では、アメリカ人医師のアドバイスにより1993年より日本のどこの大学病院整形外科よりも早くMIS最小侵襲人工股関節手術への取り組みと手術の施行を開始し、2002年より、ほとんどの人工股関節手術の症例でMIS最小侵襲手術を行ったところ、術後の回復が大変早かったために、膝の手術、すなわち、人工膝関節手術においても、MIS最小侵襲手術で同様に有効な結果が得られるものと考えられるようになりました。メーカー各社も趣意に賛同していただき、大腿骨用・脛骨用・膝蓋骨用のそれぞれ特殊な人工関節手術機械を開発し、これによってさらに小さな傷と膝関節周囲組織と筋肉への少ない侵襲で人工膝関節手術を行うことができるようになりました。


MIS最小侵襲人工膝関節手術

最新のMIS最小侵襲人工膝関節手術(MIS極小侵襲人工膝関節手術、MITKA=minimally invasive total knee arthroplasty)を終えて、術後4週目の手術創の写真です。最近は、人工膝関節手術は8〜9cmで手術ができることが多くなってきました。変形や拘縮の著明な方では、もう少し切開が必要ですが、手術創が小さいと、筋肉や関節周囲組織の損傷が小さいのはもちろんのこと、人工膝関節手術を受けた患者さんの傷の痛みも小さく、リハビリが早く進み、以前に比べて大変早い回復が得られます。股関節でのMIS手術(=9cm以下の小さな皮膚切開で行う最小侵襲手術)は手術のコツさえつかんで慣れてしまうと簡単ですが、膝関節でのMIS手術は、小さい手術創からのぞき見るような形の手術になり、股関節のMIS手術よりさらに大変で率直に言うと難しいと思います。手術肢位を何度も変えたり筋鈎を持つ助手にも負担になったりして大変ですが、一方、患者さんにとっては、手術の翌日から歩行開始できたり4〜5日で独歩可能となったり1週間で膝が全部曲がるようになったりする患者さんも多く、股関節のMIS手術の時と同様、今までの術後経過を見慣れている術者自身が驚かされる程の早い回復が認められ、それを考えるとどんなに苦労してもうまくMIS人工膝関節手術を最後までやり遂げたいという気が湧いてきます。MIS人工膝関節手術を終えた後の膝は、麻酔のかかっている術直後の時点で、すでに安定感が格段に違います。


MIS人工膝関節手術後 1週間目の歩行
ハイビジョンwmv

日本より先行してMIS手術が行われてきたアメリカでも使用されているMIS人工膝関節手術用の機械は、すでにメーカー各社から国内でも貸し出しされております。膝関節のMIS手術は股関節のMIS手術より難しい手術であると書きましたが、膝関節のMIS手術を行うことが技術的に可能になったとしても、毎回必ず正確にすべての手術をうまく行うことができるかどうかというところが、MIS人工膝関節手術の本当の問題点です。真摯な整形外科の医師がすぐに飛びつかないのはこの点が大きな問題だからです。ちゃんと切開すれば正確な手術ができるのに、小さな傷では思い通りに操作しにくいと感じます。このため、アメリカでMIS人工膝関節手術を行う施設でも、まだ全例に行うのではなく、若くて関節の破壊・変形が軽い患者さんがこの手術に適しているとされているところが多いのが現状です。人工股関節手術については、アメリカではすでにすべての人工股関節手術のうち約70%がMIS人工股関節手術で行われるようになってきているので、膝についても日米共に今後MIS人工膝関節手術が増えてくると考えられます。MIS手術によって小さな負担で確実な除痛と早期回復とよい可動域が得られるようになってくると、今までまだ手術が早いとされながらも膝が痛くて関節注射や消炎鎮痛処置などで病院や接骨院通いをしていた方々も、今後は、今までより早い段階でもこの手術により痛みから解放される恩恵にあずかれるようになってくると思っています。アメリカ・ドイツなど日本よりMIS人工膝関節手術手術の進んでいる国では、人工膝関節手術の適応年齢が下がってきています。日本でもすでに股関節のMIS手術では若年者でも人工股関節手術をしてもよいと考える施設が多数になりつつあり、今後、日本もMIS人工膝関節手術が広がることによって、今までよりもっと早く膝の痛みを手術で治せるようになると思います。膝のMIS手術の今後の展望については、年齢的に皮膚の伸展性がまだよい段階の患者さんで、大切開で負担の大きい人工膝関節手術をとまどっていた今までよりも若い年齢層の患者さんがよい適応とされてくると思います。筋力低下や可動域制限のおきる前の段階で手術を受けている方のほうが、筋力低下や関節拘縮をきたしてから手術を受けた方より普通に歩けて日常生活動作レベルが高いのは、MIS手術でなくても明らかでしょう。

最近では、70歳以上の高齢者にも、ほとんどの場合MIS極小侵襲人工膝関節手術が可能となってきています。術前の状態の悪い高齢者の場合でも、手術翌日に歩行訓練が開始でき、術後1週間で痛みなく自動(運動)的に120°程度屈曲できるようになったり、術後2週間程度で独歩になるなど、やはり従来手術の術後経過を見慣れている人から見ると驚くような早さで回復します。両側同時の極小侵襲人工膝関節手術ももちろん可能です。両膝に手術が必要な方はもともと重症の方が多く、自然な歩行容姿まで回復するのに従来2〜3ヶ月近くかかりましたが、MIS極小侵襲人工膝関節手術では両膝の手術の場合でも1ヶ月程度ですっかり回復してしまうケースが増えてきています。両側極小侵襲人工膝関節手術の場合、患者さんにとっては手術が一度で済んでしまう利点があります。

MIS最小侵襲人工膝関節手術では他にも注意点があります。手術創のサイズの小ささだけを求めた場合は、脛骨を側方から切ることにより、6〜7cmにすることもできます。しかし、側方から脛骨の骨切りを行うと、術後に膝の内外反の不正確さが残ることがあり、人工関節の寿命と外見上の問題が生じます。当院では、手術を正確に行うことを第一目標とし、手術創を小さくしつつも、脛骨の骨切りは正面より行い、正確確実に手術を行えるようにしております。(2007年2月16日cash



人工膝関節形成術の歴史についてひとこと:変形性膝関節症に対する人工膝関節手術の初期の発展の歴史は、股関節の人工関節の発展の歴史と密接な関係があります。人工関節の歴史的な最初の手術はまず股関節で行われ、その成功が膝関節に応用されて発展してきました。膝に人工物を挿入して膝の痛みを改善しようと考えたのは、ヴェルネイユでした。彼は膝の関節のいたんだ部分に軟部組織を挿入して痛みが取れるとの考えを1860年に発表しましたが、その後、彼の考えに従って、ブタの膀胱、ナイロン、大腿筋膜で試されましたが、結果的にはよい成績は得られませんでした。1938年になって股関節にバイタリウムという金属を入れる手術がうまくいくようになり、この成功を見てキャンベルは膝関節形成術にも金属を用いうることを1940年に発表いたしましたが、広く人工膝関節形成術が行われることはありませんでした。1961年にチャンレイが発表した人工股関節手術で優れた成績が得られるようになり、その後、膝について本格的に人工関節手術が普及するようになったのは1970年代になってからのことです。1971年にガストンがチャンレイと同様にセメントを使って人工関節を強固に固定し、1972年に発表されたジオメトリックという人工関節は、人工関節手術の最も普及しているアメリカでも広く使われました。しかし、それまでの人工関節は今の時代から見ると、まだ充分満足な成績が得られるものではありませんでした。1973年にI/B型という人工関節が出て、今最も普及している手術方法の原型ができあがりました。この人工関節では膝があまり曲がりませんが、痛みがちゃんととれるため世界中に普及し、今でも、使っている先生もいらっしゃいます。その後、膝の左右に合わせたデザインの人工関節が作られるようになり、初期の人工関節に比べてよく曲がるようになってきました。はじめの頃は人工膝関節でちゃんと痛みがとれるのかが問題点でしたが、今では、痛みがとれるのは当然で、かつ、熟練した術者が手術をすれば、膝がよく曲がるのも当たり前というところに来ました。最近では、どうしたら人工関節が長持ちするか、どうしたら小さな傷で手術を行えて、術後早期に回復するかという方に整形外科医の関心が移ってきています。
 人工膝関節のデザインの向上と、手術機械の開発、手術手技の改良により、手術前にちゃんと膝の曲がる患者さんは、手術の後も良く曲がる方が多くなりました。正坐できる膝の動画を作ってみましたので、よろしければ、ここ(884KB)をクリックしてご覧下さい。また、人工関節の実物写真をご覧になりたい方はこちらへ(296KB)どうぞ。


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