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辻整形外科クリニック   PAINFUL LESION

TSUJI ORTHOPAEDIC INSTITUTE



MIS最小侵襲人工関節手術の Learning Curve について
"The Other Side of the Coin"


ここは私のホームページの他のフォーマルなサイトに比べて、現時点で思う通りの私の考えている事を述べたブログ風サイトです。ここは、言ってみれば、私の人工関節手術に対する考え方の本心のようなところです。MIS最小侵襲人工股関節手術について極められたエキスパートの先生方には全く不要のサイトです。それ以外の医療機関の方に一目見ていただければと思って作りました。


インターネットはすべてか?

大学教授が最近の学生は何でもインターネットで調べる、と話していた。
医学部教授から見ればインターネットは不正確な記載や不十分な記載がまだ多いし、学生はそんなものを参照して大学のレポートを書いてくる! 学生から見ればキーボードが百科事典である。図書館へ行かなくてもよい。

私も自分の診察室で、正しい解剖学的位置を含めた炎症の病名を患者に告げたら、あとで患者の学校のスポーツコーチの先生にそんな病名はインターネットに出ていない、といって次回再診してきた患者にしかられたことがある。私から見たらインターネットに正しい病名が出ていなかっただけだが、コーチはインターネットに出ていない病名では調べようがなく納得がいかなかったようである。

インターネットはすべてではないが、内容を正しく判断すればすばらしい。よいサイトをいつも選択してくれて、こんなにいいものはない!とサーチエンジン関係者の方(もしくはロボット)に感謝している。
正しい判断力を養いながら見ていただきたい。
私は教授と学生のインターネットのニッチを埋める意味合いも込めて、このサイトを記載したいと思います。

アメリカでは今では事の本質を極めたページが上位にある。(昔はそうでもなかった。) 詳しく書かれたページでその専門家が書いたものが認められている。事の本質を極めたページがなくてどちらか一方の立場のサイトの場合、2種類の意見があれば両方とも同様に採用する。MIS手術が良いとする意見と、良くないとする意見があれば、両方検索サイトに上がってくる。たとえば、MIS手術にあまり熟練していない医師がMIS手術を行った場合には手術成績が芳しくない(見れない場合はこちらのテキストファイル)などのようにである。(補足:検索サイトからは直接全部読めるが、直リンクでは読めなかった。) 学会では正直に議論されても、インターネットではどうしても良い内容重視でまだ欠点については書きにくいようである。

日本では、昔は相互リンクを結んだ患者サイトがGoogleのリンク重視の影響もあって上位に並んでいた。学会で言えば100例以上をまとめた発表論文ではなくて、1例の症例報告に該当するものである。しかし、ここに書かれていることは患者さんの本心なので、意見を求められて担当医に気を遣って良く書いた患者の声のような記事よりはよい。日本でもだいぶ事の本質を極めたページが上に上がってくるようになってきた。

また、人目をひく内容で打ち上げ花火のようなサイトでもセンセーショナルな内容を記載したら上位に載る。(でも、本当はそれでも知りたいから、私ももちろん見る。) 判断を惑わすコインの表側[表]だけが記載され、裏側[裏]については触れられていないことがある。ここでは裏側についても記載してみなさんが公平に判断できるようにしておきたいと思います。

2003年3月4日MIS最小侵襲人工股関節手術(=MIS極小侵襲人工股関節手術)について具体的な内容を記載したホームページがなかったときに、私がいろいろ試行錯誤して10年かけて到達した前外側筋間侵入のMIS人工股関節手術の成績が非常によいことから、将来この方法が今後の主流になると判断したので、手術写真も供覧して日本で最初のMIS最小侵襲人工股関節手術ホームページを作り、私の10年来の苦労の成果を他に先駆けて初めて公開いたしましたが、今回も、こんな事をインターネットに書いている人はあまりいないので批判されるかもしれませんが、私の経験や過去の歴史的教訓に基づいて正しいと考察されるポイントなので、あえてここに最初にWeb記載したいと思います。

まずは、「ロボット手術」
[表]これは20年前にもすでにアメリカに存在した。そして、ロボット手術のできる病院では患者さんが多くロボット手術を希望した。うまくいけば医師も手術のスイッチを押すだけでよい。
[裏]ロボットは骨移植などを必要として手術の難しい臼蓋側は手術できないので、実は人間が手術している。

次に、短い「日本人向けステム」
[表]日本人の骨にあわせて人工関節をデザインする考え方は、術者にとっては手術時に人工関節がピッタリ当てはまるのでありがたい。
[裏]日本人の骨といっても実際は臼蓋形成不全と骨頭の変形を伴っているので、病的な骨の平均値をとっても皆さんの病気の状態や程度が同じではないからあまり意味はない。関節の変形があればできるだけ正常な解剖学的位置関係に人工関節を設置する方が、異常なまま設置するより、術後の良好な可動域獲得や脱臼防止などの観点からの成績がよい。このためには、その人にピッタリ合った人工関節を、ステムの長い機種や短い機種が存在するので、実際はそこから選択すればよい。また、歴史的にはショートステムの長期成績はロングステムの長期成績に比べて不良であった。それは力学的に考えても当然の帰結である。サイズも欧米の大手人工関節メーカーはほとんど日本人向けの物を用意しているし、私が人股関節製作工場を見学に行ったときには、アメリカのメーカーが日本製の工作機械で人工関節を製作していた。これってアメリカ製?日本製?
製作した工作機械で決めるのか、工場の所在地で決めるのか、それとも CAD-CAMコンピューターにデータをインプットした人の頭脳で決めるのか?
現在主流のセメントレスステムの長期成績は約20年前頃に判明し始めましたが、その草分け的存在であるAMLというステムは1977年にアメリカのEngh先生によって開発され、10年後、当時最善の10年成績を有するステムであることが判明しました。20年前から約10年間近くアメリカのFDA(食品医薬品局)という政府の機関でセメントレスで使用してよいという許可を得た唯一のステムであり、術後大腿部痛がほとんどないなどのように成績がよかったので、アメリカでは他社のステムの7倍もの売り上げがありました。その研究開発グループの人たちの一部がさらによい素材と形状のステムを開発することになりました。アメリカ人向けのサイズはほとんど完成し、当時の日本の市場規模は世界第2位だったので日本人向けのサイズで人工股関節とさらに人工膝関節も作る必要がありました。私は意見を求められたので、すばらしいステムの後継機種と新しい人工膝関節の日本人向けサイズの製作であったしぜひ協力したいと思い、何度か日本とアメリカで相談をすることになりました。その時、小さい日本人向けステム全長の長さとネックの長さ、そしてオフセットの長さについて検討し、ヘッドのサイズについても日本人向けのもが必要であることを相談しました。また人工膝関節については、どこまで小さなものが必要かとか、パテラコンポーネントのサイズと厚みはどうしたらよいかとか、正坐を希望する日本人に対して良く曲がるようにするにはどうしたらよいかなどを相談しました。そしてその小さなコンポーネントをより安全に設置するための手術工具も開発しました(日本人向け人工関節と手術工具の開発会議)。同様に、もっと大手の先発メーカーではすでにそういった作業は終了していました。また、各社の新製品についても常に順次日本人向けに製品が改良されたものが開発・販売されています。ですから欧米製の人工関節は日本人には合わないというのではなく、日本人医師で欧米の会社に意見を求められて共同製作した方は大勢いらっしゃることだと思います。
AMLステムと同時にAMLカップが使われていた頃、AMLカップを設置する私専用のMIS最小侵襲手術工具を18年も前に今と同じデザインのものを私の依頼でメーカーは作ってくれていました。(アメリカの人工関節製作会社は日本人医師に好意的!)
人工関節も実際今では、2008年6月就航予定の次世代旅客機ボーイング787と同様に、日米共同開発が多いのです。ちなみに、この旅客機は、炭素繊維材料などで日本企業の製作比率が35%もあり、さらにボーイング社は日本人の希望に沿い飛行機なのに日本製ウォシュレットまでつけてくれます!
股関節疾患患者にとっては朗報である! (*^_^*)

「カスタムメード(=テーラーメード、各個人に合わせて特注の人工関節を作成)の人工関節」
[表]患者さんの骨にピッタリの人工関節があればこれほどすばらしいことはない。
[裏]せっかくオーダーメードして作った人工関節が、手術時に適合しなかったらどうするのか。100万円もする人工関節は、その人のために作ったので、セメントで固定するしかない。小さければそれですむが、逆に大きければ骨折するので、術者から見れば認容しがたい。セメントレスなら工具も作成しなければならない。したがって、現時点ではほとんど実用化の見込みはない。洋服ならS・M・L・LLの4サイズしかないし、昔の人工関節も5サイズ程度しかなかったが、現在市販されている人工関節は数万通りの組み合わせがあり、現時点で別にサイズで困っているわけではない。
臨床応用例ではstress shieldingが発生することがわかってきたが、外側がstraightでないステムはstress shieldingや外側近位部のlooseningやradiolucent lineが発生することは力学的に考えても当然である。

「表面置換型人工股関節」
[表]大腿骨の表面だけを置換するので、ここが傷んでもあとでここだけ換えればよい。
[裏]実際は臼蓋側が壊れることの方が多いので、約束通りの話ではなくなる。(=骨頭だけではないので再置換が最初の話ほど容易でなくなるということ。) 1980年代に判明した表面置換型人工股関節の10年成績は、現在の機種の人工関節の長期成績より悪い。さらに10年を越えてからの残存率もきわめて悪い。(どの図表かわからない方はこちらのコピー参照。グラフは縦軸が残存率で横軸が時間で、10年は"120 months"です。) 日本の股関節治療のパイオニアである京都大学医学部の人工股関節の長期成績(京大30年成績の3ページ目)が公開されていますが、従来のTHRの成績が表面置換型の成績よりはるかに良いことが、10年成績の明らかな違いを見ていただければよくわかると思います。(どの図表かわからない方はこちらのコピー参照。グラフは同様に縦軸が残存率で横軸が時間で、10年は"120 months"です。横の時間軸は上と違って国内最長データである30年分もあるので見る場所に注意。) また、膝関節では hinge型(蝶番型)の人工関節が使われたこともあったが、長期的に loosening(弛緩、緩み、ルースニング)の発生率がきわめて高く、術後感染率(overall infection rate) も10〜30%にも達したと報告され、1970年代初期を境に constrained type の人工関節から semi-constrained type の人工関節に移行したという歴史的経緯がある。Conventional THA よりも、さらに constrained な表面置換型人工股関節が生体の骨組織にかかる負担が大きいことは、過去の歴史的教訓をふまえて考えると当然である。また、体内で異音があり、関節内で溶出した重金属イオンが血中に移行するが、腎臓など生体に対する長期的悪影響についても、現在のところわかっていない。実際に最近の表面置換型人工股関節の機種で今の人工関節と同等かそれをしのぐ10年以上の安全性を含めたトータルとしての長期成績がよい事が実証されれば私も使用をぜひ検討したいと思っているが、最近の機種の術後成績発表は今のところまだほとんど10年未満である。
(←2007年7月30日このサイト作成時点で)

2012年に京都で開かれた第85回日本整形外科学会では、metal-on-metal joint articulationにおける重金属イオンの血中濃度上昇を結論づける発表が多数を占めていた。私は実は血中濃度もさることながら関節内の重金属イオンの局所濃度も重要だと考えている。それは臨床的に局所の痛みpseudotumor-like granulomaperiprosthetic soft-tissue necrosisをきたす症例が既に散見されるからである。また、若年時に重金属イオンの血中濃度が発癌レベルでなくても、人生の後半で血清クレアチニン・レベルが上昇してきた時点では、血中の重金属イオンを充分に体外に排出できないことも充分想定される。Co,Cr,Mo等の重金属イオンは体内での毒性が強く、実験上も、重金属イオンが細胞分裂に悪影響を及ぼしaneuploidy(異数性)やtranslocations(転座)などの染色体異常を起こすことが知られ、BHR推進者は臨床的にはそれでも問題はないとしているが、日本での研究成果では看過できない結果が出てきつつある。引用した先の2つのサイトにはどちらにも染色体異常による発癌性があることについて明記されている。多彩な症状を呈する六価クロム中毒という言葉なら聞いたことがあるであろう。2012年6月の時点では日本では表面置換型人工股関節について希望的な観測ばかりが大きく紹介され、発癌性などのcriticalな問題点について正確に記載したサイトはない。このサイトの製品も短期成績に問題はないとまだ記載しているが、外国でのalertに基づき既にこの製品の日本国内販売から撤退している。放射性物質の漏出を隠したり、発癌性物質の血中濃度上昇を正確に記載しなかったり、「今のところ発癌性の心配はない。」とサイトに記載したりする事は、真の情報をすべて伝えない原発事故対応のミンスの政治手法に似ていて害悪ですらあると言える。現実に術後短期間の間に末梢血リンパ球にはaneuploidyとtranslocationsが発生している事が2004年の時点ですでに確認されている。
アメリカでは長期成績は機種によって大きなバラツキがあることが既に判明していて、複数の表面置換型人工股関節で術後成績が不良である。機種間のバラツキは現実的には病態の発現時期の差であることもよくある。(現にASRもBHRも同様なCo,Cr,Mo合金製である。) 2008年7月22日に米国股関節学会会長のLawrence D. Dorr, M.D.による最初の報告があり、ある製品がリコールとなった。このリコールの原因は私が最初から指摘しているとおりの臼蓋側のlooseningである。2010年8月にも別の製品がリコールの対象となった。訴訟頻発し、これに関して2011年1月に報告を受けたFDA調査・規制に乗り出してきている。私が最初から話しているとおり、「約束通りの話ではなくなる。」ことが訴訟の直接の感情的原因である。日米の大手メーカーも販売を自粛しはじめ、日本では表面置換型人工股関節の製品自体も今は小規模の輸入販売業者から入手できる程度に限られてきた。
2012年2月28日、BHRが多数行われている英国でも Medicines and Healthcare products Regulatory Agency (MHRA) から全てのMoM人工股関節に対してMedical Device Alert が出され、今後の臨床使用について警告を発している。
現実に存在する問題をベースにした警告を無視して問題が生じ紛争に至った場合には、裁判所は証拠に基づいてどう判断するのかを、訴訟が米国並みに多発する前に日本でも今のうちによく考えておいた方がよいと思う。
MoMはCoCやCoPに比して副作用が発生したときの弊害が甚大すぎるように思う。英米の保健行政機関が使用を手控えるように既に指導しているので、いずれ日本でも同様の措置がとられるであろう。
(日本でのMISの普及が米国の2〜3年遅れ、人工関節の学会発表の演題の内容が2〜3年遅れ、製品の認可が2〜3年遅れ、副作用への対応なども遅れるのは毎度のことである。自室でパソコンのモニターからアメリカの実情をリアルタイムで紹介してくれるGoogle先生には日頃から大感謝である。)

(余談: 唯一 metal-on-metal のTHAが成績良好であると発表していたのは韓国人医師であるが、欧米の医師と親交の深い日本人座長の質問に論理的に答えることはできず、最後に「人種の違いである」と答えていた。失礼とは思ったが私はその場で退場した。私の患者の術後に制限動作がほとんどないのに比して、彼の発表では術後の制限動作が過多だと思った。ただし、日本の病院でも後方アプローチ採用の病院で制限動作のパンフレットまで印刷して手術後に患者に渡したりWebで紹介したりしている施設があるので、彼だけが悪いわけではないと弁護しておく。(日本語のWebでさえ制限動作を詳しく記載したサイトが上位に上げられているのを見かけるくらいである。) 低医療費で、高品質の人工関節がほとんど使用されていない韓国では、日常生活動作を制限することにより粗悪なM-on-M THAの延命化を計っているのだろうと推測した。結論的にMoMについては 2ch用語で言えばオワコンである。)

「脊髄誘発電位術中モニタリング」
[表]これがうまくいく場合は本当にありがたい。
[裏]これは金沢大学でも22年前、当院でも14年前から行っているが、実際には麻酔をかけると波形が弱まり正確にモニタリングしにくくなるので、うまくいく人もいるけどうまくいかない人もいる。当院でもできるが、私はあまり信用していない。

「ナビゲーション手術」
[表]これが100%正確で手間なしなら大変助かる。
[裏]コンピューターの座標軸ともいえる肝心(=肝腎…腎臓も大切)の骨盤上の位置決めのランドマークを人の手作業で付ける(=コンピューター・レジストレーション)ため、カーナビで言えば、GPS衛星の位置決めが手作業であるようなものであるから、根本的に期待されるような高精度・高信頼度のものではない。GPS衛星がふらふら動いていたら、自分の車がどうなるかを考えてみればわかる話で、路面を直接見ずにナビだけを見て崖っぷちの山道などを走行することは不可能である。現に、ナビ誘導装置のみに頼って目視不能な滑走路に着陸を試み、着陸に失敗して激突・炎上した旅客機事故がつい先日もどこかの国で発生し、多数の人が死亡した。自分の目で見てできないことが、機械でできるようになったといっても限度がある。ナビはあくまでも補助的なものであり、人の生命や健康がかかっている場合は、直接、滑走路なり手術野なりを自分の目で直接確認することが不可欠である。人の命を預かる着陸と同様、人の命を預かる手術に際しては、ナビを見て手術するのではなくて、股関節の人工関節設置部自体を直視下に見て手術することが最重要である。アメリカでは人工股関節手術に際してMIS手術をする割合が70%になってきたが、ナビほとんど使われていない。

2012年の第85回日本整形外科学会での報告の現状:
膝関節については、「ナビゲーションを用いた手術と用いない手術で術後中期臨床成績で有意差がない」と結論づける発表ばかりであった。著明な成書執筆名誉教授に「ナビを用いても長期臨床成績に全く有意差がない」とフロアから指摘された演者も、ほとんど全員この大先生の意見に演台で賛同していた。現状では学会においてナビが臨床成績の向上をもたらすというコンセンサスは今のところない。
股関節については、ナビを使うとコンポーネントの設置位置がストライクゾーンに入る確率が上がるといういつもの尊敬している先生の発表があった。私はほとんどの症例で直球をストライクゾーンのど真ん中に設置しているが、ナビ使用のこの発表データを見ていて、コーナーいっぱいを攻めるダルビッシュのような鋭い変化球ピッチャーみたいだと感じた。さらに、従前は1人の"優秀な"医師の成績としてストライクゾーンをはずれている症例を示されていたが、これは単にある医師1人の1例報告だと思っていた。今回さらに別の術者のものか複数のボール玉の症例が追加され、その情報収集能力の高さに驚いた。この発表を見て自分の手術はもっと正確だと思っている医師は実際多いと思うし、手術が不正確になる原因は直視下に骨を見ずにアラインメント・ガイドを見て手術をするからカップの設置が不正確になるということを知っている医師も多いはずである。
(This is the essence of THA.) 術者が経験未熟な場合にも、ストライクゾーンをはずしやすいのは言わずもがなである。
種々の発表を聞いて現時点で私が考えることは、ナビは訓練パイロット教育用の flight simulator 程度の役割はあると思い始めてきている。ナビは技術が発展途上の若い外科医にとっては文字通り目から鱗の福音である。(実際、リアルタイム調査で、学会出席医師の年齢は30歳代が最多であった。) 下に記述する learning curve を向上させ、早くナビから卒業して自前の技術で独り立ちして、佐渡のトキの様に自力で大空を羽ばたけるようになることを望んでやまない。

MIS最小侵襲人工股関節手術について私がアメリカで聞いたのは20年ほど前ですが、30年も前(Kristaps J. Keggi, MD)から手術している先生をはじめとして4人のMIS手術の専門家による対談について記載したホームページを見ました。(cached text pdf)これを見ると、4人共いかに直視下(good visualization)で手術をするかに努力しています。このサイトでは、コンピューター・ナビゲーションについては「期待される装置ではあるが、当分は使用が広がる事はないだろう。」(David Fisher, MD)と述べられています。ナビゲーションシステムの機械装置自体は彼ら熟練した医師が満足できるほどすばらしいできではなく、現時点では人間の方がナビよりも確かな判断力を持っているようです。彼ら4人共、私と同様、本当に必要なときに透視装置は使っていますが、ナビは使っていません。ナビゲーションやMIS手術機械などの設備がそろったからMIS手術ができるのではなく、後述するMIS最小侵襲人工関節手術の問題点である learning curve を医師が克服するからMIS手術ができるようになるという内容の対談がされています。

[表]と[裏]の人の迷惑になるような話をなぜここに書いたのでしょう。
子供の時聞いた話があります。視覚障害者の子供に象を教えようと思って先生が動物園に連れて行きました。
ある子供は鼻を触り、またある子は耳を触り、胴体を触った子や足を触った子がいました。学校へ帰って子供たちはそれぞれ話していました。
「象は長いものだよ。」
「象は平べったいものだよ。」
「象は壁みたいなものだよ。」
「象は丸太ん棒みたいなものだよ。」
例え話が悪くて私が政治家なら国会で喚問されそうですが、みなさんにはこんな事のないようにしていただきたいと思ったからです。

まだ術者が話したくない内容一つですが、なぜ昔からあるMIS最小侵襲人工股関節手術が最近になって日米のマスコミで報道され始めたのでしょうか?それは、メーカー間の競争が発端で、センセーショナルにマスコミに伝えられるようになったからです。このため、難しい手術をしなければならなくなった医師ははじめ大変でしたが、患者さんたちは大変な恩恵を受けました。しかし、今やアメリカでは普遍的な手術になり、全世界に広がりつつあると言えます。

人工関節について学ぶためには、歴史は重要です。今は戦争のあと賠償金は課しません。人のものを壊したり人を殺したりしておいて弁償しないというのだから、理由がわからなければとんでもない話である。第1次世界大戦の敗戦国ドイツに連合国は多額の賠償金を課し、ドイツの国民は戦争は終わったのに働けども働けども生活は全く楽にならず、ナチスなどの国粋主義者の台頭を招き、第2次世界大戦が勃発しました。人工関節も今の形状になったのにはすべて理由があります。過去の教訓(lessons learned in the past) をふまえて、改良を重ねてここまで来ました。わからないことは歴史に学ぶ姿勢も新しい発想と共に重要であると思います。


自分が書いたホームページではやはり最近の重要なタイトルの一つは「MIS最小侵襲人工関節手術」である。これについてはどうなのであろうか? ここでMIS最小侵襲人工股関節手術の裏側についても述べておきたい。

MIS最小侵襲人工関節手術には、実は、learning curve (ラーニングカーブ、習熟曲線、学習曲線) という術者から見れば本当にいやな裏面がある。(「習熟曲線」は日本では労働生産性の向上などに用いられ、働く以上は習熟と共に生産性が上がるのは当然のことである。アメリカでは learning curve は一般的な用語である。)
学会ではもちろん learning curve についても発表され日本語の医学雑誌もあるが、「学生」なら何でも出ているはずだと考えるインターネットの日本語サイトには、まだ誰も learning curve の内容について具体的に触れていない。(2007年7月30日現在、人工関節手術に関して)
「教授」なら学会で討論しているので知っていて当然の話であるが、まあ、手術を苦労して一生懸命実際に行っている術者から見ればマスコミやインターネットにあまり公表したい話ではないので日本語インターネットに出ていないのも無理からぬ話であろう。しかし、 learning curve があるということは、人間の性(さが)である。これがイヤならロボットに手術してもらうしかない。

アメリカのサイトでは learning curve について熟知していないと、人工関節を正しく設置できず落とし穴にはまるという指摘や、19%の人工関節部品の設置不良や2.8%の術中骨折が起こるという指摘が Web上にアップロードされています。また、学会で MIS手術の賛否両論の意見があること(見れない場合はこちらのテキストファイル)もアップロードされています。

これらを知りつくしかつ克服してこそ初めて患者さんの期待に答えられる真の意味でのMIS最小侵襲人工関節手術になると言えます。MIS手術の本当の難しいところは、この learning curve の初期の段階の障害を術者が乗り越えて、骨折を起こさずにすぺての症例に正確かつ完璧に人工関節を設置できるようになるところにあると言えます。(ただし、これは今後各施設で良い指導者が増えれば解決できそうです。私は習熟と試行錯誤が兼用だったので完成までに10年かかりましたが、アメリカのサイトを見ていると、習熟だけなら5年程度でできるとの記載もありました。) また、その上さらに、手術技能だけではなくて、知識としてその前段階も含めて、さらに、また、learning curve があるとも言えます。

さらに話を複雑にさせることに、人工股関節手術のアプローチ(手術侵入路)には前方と後方があって、それぞれ注意点や成績や発展の歴史が異なる。私の場合には、まず前方侵入の手術を学び、次に後方侵入を行うようになり、その後、前方後方両者を使い分けるようになって、また最終的に前方侵入(前外側アプローチともいう。)に戻っている。学習は難しく、learning curve がまたそれぞれに存在していた。
(注:前方侵入は股関節を前方から脱臼させて手術する方法で、後方侵入は股関節を後方から脱臼させて手術する方法である。)

学会で発表される learning curve は「手術時間」や「出血量」ですが、ここでは、もっとトータルな思考課程も含めたMIS最小侵襲人工関節手術の learning curve についてお話したいと思います。

@信用しない。
A関心を持つ。
Bやってみてできる。(10%程度にMIS手術ができる。)
Cうまくできるようになる。(MIS手術が半数以上できるようになる)
Dいつも100%必ずうまくできるようになり一般手術よりもよい成績を出せるようになる(MIS手術がほぼ全症例で可能になるという最終ゴール)。
Eしかし常に進歩しているのが現状。

具体的に、私の場合はこうであった。

@私がMIS最小侵襲人工関節手術のことについてアメリカで初めて聞いたのは約20年前のことである。最初は本当か?とあまり信用することができなかった。そんなに無理に傷を小さくしなくても、患者にとっては一生の手術であるから、多少多めに切っても完全な手術をするように心がけなければならないと思った。

Aしかし実際に手術をしたことのあるアメリカ人の先生に会って話を聞くと、大変な関心が湧いてきた。一般的な手術がうまくできるようになるとなおさらのことである。子供の時、両親に日本人は世界で一番手が器用であると教わったが、それは戦時中そう教育を受けたからで、実際に自分の目で見てみると、アメリカ人にも頭のいい人には器用な人が多いと思いました。(指は頭の指令で動く。)

Bはじめに手術がしやすそうな症例から少しずつ挑戦してみる。最初は後方侵入でMIS最小侵襲人工関節手術を開始した。MIS手術初心者の頃はこちらの方が簡単であった。何とかできるようになってきたが、時間もかかるし、手術視野が悪いし、最初の頃は術後の患者さんが今のようにすぐに歩けるようになるわけでもなかった。また、皮切は小さいが関節周囲の組織の切開は今ほど小さくなったとはいえない。また、後方侵入手術では脱臼の発生率が一般的にも理論的にも高い。術中強く内旋するのでステム挿入時の骨折の発生率も高い。何とか前方侵入で手術ができないか挑戦を続けた。しかし、最初のうち前方侵入ではかえって傷が大きくなってしまう。しかし、術後の経過はこちらの方がよいし患者さんを歩かせることもこちらの方が早くできる。手術創も後方侵入では小さくするにも限界があるが、前方侵入では慣れてくるとさらに小さくできそうである。しだいにうまく前方侵入の手術ができるようになってくると、手術視野も後方侵入に比べて格段によく、すべての部位を自分の目で確認しながら手術することができようになってくる。すこしずつMIS前方直視下侵入手術に挑戦の継続である。

C5年ほどかかってやっとさらに傷を小さくできるようになってきたが、人工関節のカップを設置したあと、満足行かなくて再度リーミングし直したこともあったし、ステムの挿入する部位はなかなか一度で骨切りできず、長めから開始して何度もトライアルで確認しながらやっと骨切り部位が決定できるといった時もあり、うまくできるようになった様に思っても時間のかかることもあり、あまり完全に自己満足できる手術というところまでいかない。

Dさらに5年ほどかかって、やっとこの段階に到達した。MIS手術に慣れて解剖学的位置関係がわかってくると、カップの設置や大腿骨ネックの骨切りが一度で正確にできるようになり、切り口が小さい分縫合時間も短くなり、最終的に短い時間で手術を終えることができるようになって出血量も減少し、術後の患者さんもすぐに歩けるようになり、術後、跛行もほとんどなくなって普通の歩き方ができる人がほとんどになってくる。私の場合は、自分で苦労して挑戦したので、BからC、CからDに到達するのにそれぞれ5年程ずつかかったが、指導者がいればさらにこれを短縮することは当然可能であると思う。ここまで来るとやはりMIS人工関節手術は一般的な人工股関節手術よりもいい手術であると確信を持って言えるようになる。私が2002年に筋間侵入の前外側アプローチに到達したころは、まだ、具体的なMIS人工股関節手術のホームページさえなかったし、実際は日本の約75〜80%の病院では私がホームページに初めて書いた前方侵入最小侵襲手術とは別の方法である後方侵入による手術方法で手術が行われておりました。(前方侵入単独でMIS手術がうまくできると考えていた人はあまりいなかった。成績がよいのでどうしても前方から手術したいと気付いていたアメリカ人医師は2ヵ所を切る手術を行っていた。)全例に前方アプローチのMIS手術を行うことができるようになって満5年が経過しましたが、最近では、この方法がよいとして同じ方法を採用、もしくは同様の方法を採用する病院が増えてきており、日本のサイトでも多くが、今では前方アプローチを採用していると書くようになってきています。(2004年に採用しているサイトが多い。)

Eここから先が問題である。人工関節手術は近年生まれた整形外科手術の中で最も成功している手術である。材料も術式も進歩が早い。たぶん腰のヘルニアの手術のように私の生きている間にこれで完成というわけにはいかないであろう。つねに進歩が必要である。上記のBCDはだんだんMIS手術を失敗なく行える患者さんのパーセンテージ数が増えて来るという量的な進歩と正確さの向上であるが、ここから先はさらなる質的な進歩である。

MIS最小侵襲人工関節手術は、MIS用の手術機械や手術初心者用のナビゲーションを購入し、「さあ、きょうからMIS最小侵襲手術を始めましょう。」と言って25cmの傷をいきなり8cmにできるものではない。(Kristaps J. Keggi, MD) コツコツ試行錯誤して次第にできるようになってくる手術である。エキスパートの先生は、実際はみんな自分で苦心して手術する方法を考えているので、細かい点では微妙に違っている。最初の頃アメリカでも全症例に適応があるわけではないと言われたのも、実はMIS手術が当時難しかったからである、と私は考えています。Learning curve Cの段階では、術者にも筋鈎を持つ助手にも負担がかかるし、最初は手術時間も長くなり、麻酔医や患者さん本人にも負担がかかる。はっきり言ってやっている術者本人も始めは手術野がすべて見通せるわけではないし、力もいるし、MIS人工膝関節手術の場合は自分の指の関節までもが痛くなるし、この段階では、やっていて楽しい手術ではないと思います。近年わかってきたことは、やはり上記の learning curve Dに到達するとMIS手術はほぼ全例可能であるということである。この段階では、手術時間も短縮できるし、術後の成績も安定して良い。術者も人工関節が仕上がったときに、"That was fun." と感じるようになる。患者さんについては言わずもがなである。

MIS最小侵襲人工関節手術の長所・短所についていろいろ意見がある。ここではMIS手術の短所を重点的に記載し、それは術者がどのステージにいるかによって違うので、上に書いた learning curve のどの時点で起こりやすいかを説明します。

あるアメリカのサイト(見れない場合はこちらのテキストファイル)に書かれている短所は次の通りです。

Less fun, more sweat; (手術中術者が不安で汗もかく。)…BCの段階で起こる。
Longer operating room time; (手術時間が長くなる。)…BCの段階で起こる。
Need for more assistants; (手術助手が余分に必要になる。)…Bの段階で起こる。
Potential nerve Injury; (神経麻痺の可能性)…Bの段階で起こる。
Unrecognized fracture; (見えない骨折)…BCの段階で起こる。
Recognized fracture; (明瞭な骨折)…BCの段階で起こる。
Malposition of the components; (人工関節部品の設置不良)…Bの段階で起こる。
Skin and muscle damage; (皮膚・筋肉の損傷)…Bの段階で起こる。
Yet another learning curve to be surmounted. (さらなる習熟曲線が待ちかまえている。)…CDの段階で起こる。

これらのことが起こらないように術者は常に習熟曲線上を進まなければならないのである。

また、手術は数だけこなせば上達するというものではない。
自分自身の愚かな経験を語らせていただこう。
ゴルフを始めた頃の話です。打ちっ放しのゴルフ練習場へ行きました。練習場では練習球を打っても打っても次々とティーボールが自動的に出てきます。私はこれを次々と毎日400球打ち続けましたがあまり上達しませんでした。打球がうまく飛ばないと、だんだん冷静さを失って次から次へと何も考えずに出てきたボールをモグラたたきのように打ったからです。そのうち手が腱鞘炎になって痛くなってきたので、手が使えなくなって手術ができなくなったら困ると思ってやめました。そうしたらゴルフも上達しなくなりました。(そのかわり手術はたぶん上達したはず!?) ゴルフの上手な人を見ていると、欠点を考えて修正しながら100〜200球の練習でうまく上達しています。
やみくもに数をこなしても意味はなく、いかに考えて練習するかが大切と痛感した笑い話です。

ゴルフはモグラたたきではないし、手術はゴルフではないので、手術にゴルフの練習話がどれだけ当てはまるかわかりませんが、思考と技術の両者が相まって上達してこそ、真の上達と言え、常に向上心があってこそ本当に向上するでしょう。

当院での最小侵襲手術の実績:
1993〜2001年は全例が15cm未満の皮切で手術を行い、12〜13cmの手術創の症例がほとんどです。(このためインターネットに掲載する比較用の大切開手術の見本写真を作ることができず、話題性のインパクトに欠ける結果になりましたが、この時点でこれだけ小さな傷で手術を受けられたのは患者さんにとっては福音です。)
2002〜2007年は全例を10cm未満の皮切で手術を行うことができ、8.5cm程度の手術創の症例がほとんどです。フォーマルなサイトに「ほぼ」全例MIS最小侵襲手術が可能と書きましたが、それはもしかしたら本当にMIS手術ができない患者さんがいるかもしれないと思ったからそう書きました。(しかし実際は今までのところいなかった。) この期間の実績としては100%MIS最小侵襲手術を行うことができ、他院でMIS手術はできないと言われて受診された方や、他院でMIS手術ができなくなれば通常切開手術に切替えになると言われた方も、実際手術してみるとちゃんとMIS最小侵襲手術を完璧にできたので、実績としては、最近の5年間は、この期間受診した人工股関節手術対象の患者さんの100%全例に対して、MIS最小侵襲人工股関節手術を行うことができました。

MIS最小侵襲人工関節手術に関して、自分は learning curve のDに到達したと言って天狗になっていると、learning curve のEに到達している人に笑われて置いてきぼりにされるかもしれません。また「習熟曲線/学習曲線」に回帰します。

以上、 辻 俊一


(MIS最小侵襲人工股関節手術 MITHAについての写真説明はこちらへどうぞ)
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